広汽（GAC Group）番禺アクションの重要な一環として、広汽埃安（GAC AION）の改革はすでに成果を見せ始めている。楊龍が率いる新チーム、初のレンジエクステンダー車「i60」、そして京東（JD.com）とコラボした「AION UT Super」――その刷新された姿は、まるで広汽埃安創立当初の勢いを取り戻したかのようだ。
しかし、京東・CATL（寧徳時代）・広汽埃安の三者による革新的協業プロジェクトである「AION UT Super」は、正式納車開始の初週で1000台を突破した一方、“天窓の宣伝画像と実車が違う”“請求書の発行都市制限で補助金が受け取れない”“月399元の電気料金に3000km走行制限”など、まさに嵐のような議論を呼び起こした。
新旧交代の歴史的転換点に立つ今、人員・組織体制から車種・市場戦略まで、広汽埃安はすべてを再出発、あるいはゼロからやり直す必要がある。過去の成功体験は現在の市場には通用しない。「AION UT Super」を巡る今回の議論は、新生・広汽埃安への試練であり、さらにいえば2026年の厳しい市場環境に向けた“実戦訓練”でもある。
今回は広汽埃安は沈黙も虚勢も選ばず、CATLと京東の三者で一週間のうちに二度の「意見聴取会」を開き、ユーザーに謝罪するとともに、期間限定の補償案やキャンセル・返金案を提示した。これにより、京東の“初の納車騒動”はひとまず収束した。この出来事は、今後の車種協業に向けて貴重な経験と教訓を蓄積し、京東のクルマ販売における全チェーンのサービス改善にも役立つものとなった。
広汽埃安のグローバル車種の一つであるAION UTは、海外展開の主力モデルとなる見込みだ。そして今回の“恵みの雨”ともいえるAION UT Superの騒動は、広汽埃安が次なる市場競争に対応できる組織力をすでに備えていることを印象づけた。
2017年に広汽新能源が広汽伝祺から分離し、2020年に広汽埃安として独立運営を開始してから、わずか8年。初代総経理・古惠南は、先駆的な発想で伝統自動車メーカー初のEV専用プラットフォームと電動・知能化の自研エコシステムを構築し、広汽埃安を世界EV販売トップ3へと押し上げた。
現在、広汽番禺アクションのもと、広汽埃安と広汽伝祺は全面的にリソース統合を進め、“大広汽”としての自社事業体制を構築している。さらに、華為（Huawei）の乾崑（QianKun）インテリジェンスが、組織、運営、車種開発に劇的な変革をもたらし、楊龍の直面する課題は、古惠南が創業期に抱えていたものよりもはるかに厳しい。
迫り来る2026年に向け、広汽埃安は社内統合を加速し、全社員が一丸となって中国自動車市場の新たな転換点に備える必要がある。さらに広汽伝祺との共同運営、启境汽車（Qijing）との同ライン生産、広汽昊鉑（HYPTEC）との切り離しも実現しなければならず、内外からの二重の試練が、新生・広汽埃安に未来があるのかを早期に明らかにするだろう。
かつて、新エネルギー車市場はテスラとBYDの二強が牽引し、NIO・Xpeng・Li Autoは圧倒的な話題性に頼って生き残りの余地を確保していた。しかし現在、伝統自動車メーカー各社が電動・知能化への転換を急速に完了し、純EVのみならず、PHEVやレンジエクステンダー技術も新エネルギー車販売の主力となっている。
広汽集団の“星源レンジエクステンダー技術”を基盤に、広汽埃安は「i60」のレンジエクステンダー版と純電版をいち早く投入した。これは同社がハイブリッド市場へ挑む第一歩であり、新しいネーミング体系の第1弾車種でもある。今後、セダンの“Aシリーズ”、SUVの“Iシリーズ”、クロスオーバーの“Nシリーズ”を順次展開し、EVとレンジエクステンダーの両パワートレインを網羅したフルラインアップを構築する。
「i60」2車種の発売から「AION UT Super」が一気に話題となるまで、広汽埃安は従来の固定イメージを打ち破る努力を続けてきた。そして今回、京東・CATLとの三者コラボによって巻き起こった議論は、問題から逃げない、よりユーザー目線で、より迅速かつ丁寧に対応する“新しい広汽埃安”の姿を鮮明に示した。
打杭工事の段階から四つの工場のグローバル展開まで見届けてきた者として、私は変化を求め続ける広汽埃安を信じたい。理性が戻りつつある新エネルギー車市場において、広汽埃安はきっとユーザーの支持と信頼を勝ち取るはずだ。
