
トヨタの歴史の中で、生産終了となったガソリン車は決して多くはない。私たちがよく知るのは、マークX、クラウン、ヴィッツ、ヤリスなどの名車だ。しかし、中国自動車市場の新たな競争局面を前に、トヨタはついに現実を受け入れ、中国市場でガソリン車の生産終了を加速させている。
新エネルギー車と中国ブランドの急成長により、「グローバルモデルの投入だけでは中国ユーザーを満足させられない」という事実をトヨタは痛感した。中国のニーズを起点とした電動化・知能化こそが正しい道なのだ。
“無駄”はトヨタの経営哲学では許されない。特に競争が最も激しい中国市場では、グローバル主力ではないC-HR、イゾア、ヴェンザ、ハリアーなどの車種が徐々に市場から姿を消している。同時に、かつて重要だった“双子車戦略”も見直しの対象となり、アバロン、クラウン・クルーガー、レビンなどの統合・生産終了は避けられない状況だ。
しかし、生産終了は必ず“空いた生産能力”という問題を引き起こす。たとえば一汽トヨタ長春工場はRAV4とハリアーを生産しているが、ハリアーと第5世代RAV4が同時に生産終了となれば、8万台以上の生産能力が余剰になる。カローラでも、bZ5でも、この空白を埋めることはできない。
一方、広汽トヨタが次期ハイランダーに中国専用のレンジエクステンダーEVを採用すると発表したことで、双子車であるクラウン・クルーガーは次世代モデルが存在しないとの噂が浮上している。代替車種はクラウンSignia になる可能性があり、7人乗りミドルSUV市場はハイランダーに一本化される見通しだ。
かつて中国でのトヨタの成長を後押しした双子車戦略も、生存のためにはもはや手段を変えざるを得ない。最終的に車種の存続を決めるのは“売れるかどうか”である。

易車のデータによると、1〜11月の双子車の販売は以下の通り:
・カローラ88,469台/レビン29,326台
・RAV4 196,121台/ヴェルランダー109,257台
・クラウン・クルーガー51,514台/ハイランダー68,734台
この残酷な数字が、次に“切られる”車がどれなのかを示している。
広汽トヨタの第3工場(レビン生産)は、すでに月販1万台超のフロンランダーが生産能力を引き継ぎ、さらに全新モデル生産に向けた大規模改造が進んでいる。これはボルシア(铂智)ブランドの次期新車を迎える準備でもある。
ガソリン車の生産終了そのものは怖くない。本当に怖いのは、新しいモデルで穴を埋められないことだ。激戦の中国市場では、生産能力の余剰と販売規模の縮小は、合弁メーカーにとって“生産停止と解散の前兆”となる。
一汽トヨタの場合、bZ3とbZ5の1〜11月累計販売はわずか31,261台にとどまり、芳しくない結果となった。これは、トヨタのEVが中国ユーザーの支持を簡単には得られないことを示すものであり、BYDとの純電動協業も事実上失敗した。今後、三者がPHEV市場で協力するかどうかは不透明だ。
トヨタの既存グローバル車資源だけでは、一汽トヨタの未来を支えることは難しい。100万台規模の販売を狙うなら、BYDか、あるいは一汽集団とLeapmotorの提携に活路を求めるしかない。
実際、トヨタはすでに中国市場で“ガソリン車の全面ハイブリッド化”を達成している。2026年は“グローバル車のPHEV化元年”となり、第6世代PHEVシステムの新型バッテリーとハイブリッド専用エンジンが、ハイブリッド車の進化を再び牽引する見込みだ。
新世代PHEV技術と中国向けのローカル知能化を搭載することこそ、中国でトヨタが再び輝くための鍵となる。しかし、新エネルギー車は“中国市場の底層論理”に適合しなければ成功しない。この部分は、トヨタ中国やトヨタ中国研究開発センターでは担いきれず、最終的には“深く中国に根を張るローカルチーム”に依存せざるを得ない。トヨタが握れるのは工法と品質基準の管理権に限られる。
広汽トヨタのbZ3X は2ヶ月連続で1万台超を販売し、累計62,788台を突破した。さらにHuawei、小米、Momentaと手を組んだbZ7 は登場直後から高い注目を集めている。これはすべての合弁企業が参考にすべき成功モデルであり、中国の巨大なNEVサプライチェーンを活用すれば“コピー&ペースト”は難しくない。
アバロン、クラウン・クルーガー、グランエースなどの高級車が世界的にモデルチェンジ期を迎えるなか、一汽トヨタは100万台の生産能力を支える新たな柱を探さなければならない。しかし、カローラ、RAV4、bZシリーズだけでは未来を支えきれない。

今、一汽トヨタと広汽トヨタの進む道は明確に分かれつつある。中国の電動・知能化サプライチェーンを軸に、本土専用モデルをつくることが唯一の解である。
市場の激流は誰も待ってはくれない。トヨタの中国での方向転換は、悲壮な別れではなく、“未来に向けた自己変革”だ。生産終了と統合の痛みの裏側には、生産能力・販売・戦略を再調整する残酷な現実がある。
トヨタの本当の課題は、「どのガソリン車を終わらせるか」ではない。中国市場での“創造のロジック”を、グローバル車の投入から“中国のために生まれる車”へと完全に作り替えられるかどうかだ。
そのためには、新世代PHEVなどの核心技術の投入を加速するだけでなく、製品企画、ユーザー体験、開発の主導権を“中国市場を理解できるチーム”に委ねなければならない。
中国で、中国のために、“もう一つのトヨタ”をつくり直すのか。それとも、この世界で最も熾烈な戦場で、静かに幕を閉じるのか。今のトヨタは、成功を決める岐路に立っているのだ。
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